仄暗い魔法瓶

ファンタジー小説の投稿ブログになります。

2019-12-26から1日間の記事一覧

短い話2 木の実の道より

木の葉が風に舞い、乾いた音が森を潜っていく。 緑の匂いがいつまでも吹いている。二人の視界には、天井となって広がる木の葉と、地面となって広がる落ち葉が、ずっと続いていた。どこまで進もうが変わらない景色だ。それでも進んでいると二人が分かるのは、…

前の話1 庭園より

彼は強い人間ではなかった。庭園に咲く花は、自身が弱い花だと知らずに育つのかもしれない。もしもそうであれば、彼はそういう人間だったに違いない。 彼がいつも眺めている庭園は、真っ白な壁に囲まれ、真っ白なオブジェが足元に埋め込まれ、色鮮やかな花々…

長い話1 キングスレイクの闘技場より

ガーデンが険しい顔をすることは、滅多になかった。感受性が誰よりも深い彼は、怒りよりも先に相手の悲しみなどが分かってしまい、その穏やかな顔をもっと潤すからだ。 緑の丘を越えてキングスレイクの街にやってくれば、フィローは心配そうな顔をもっと濃く…