仄暗い魔法瓶

ファンタジー小説の投稿ブログになります。

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

短い話2 木の実の道より

木の葉が風に舞い、乾いた音が森を潜っていく。 緑の匂いがいつまでも吹いている。二人の視界には、天井となって広がる木の葉と、地面となって広がる落ち葉が、ずっと続いていた。どこまで進もうが変わらない景色だ。それでも進んでいると二人が分かるのは、…

前の話1 庭園より

彼は強い人間ではなかった。庭園に咲く花は、自身が弱い花だと知らずに育つのかもしれない。もしもそうであれば、彼はそういう人間だったに違いない。 彼がいつも眺めている庭園は、真っ白な壁に囲まれ、真っ白なオブジェが足元に埋め込まれ、色鮮やかな花々…

長い話1 キングスレイクの闘技場より

ガーデンが険しい顔をすることは、滅多になかった。感受性が誰よりも深い彼は、怒りよりも先に相手の悲しみなどが分かってしまい、その穏やかな顔をもっと潤すからだ。 緑の丘を越えてキングスレイクの街にやってくれば、フィローは心配そうな顔をもっと濃く…

少し長い話1 町の図書館より

人には一つでも長所や特技があれば十分だ、と誰かがいった。ガーデンはその言葉が好きであると同時に、これほど便利な言葉はないとさえ思っている。特に、フィローを褒める時には尚更そう思うのである。 フィローは料理が得意だった。人と上手く打ち解けられ…

短い話1 リンゴの村より

ほとんど漠然としていて、けれども求めているものは何故か分かっていたから、船走る大海の、静かに光る野原の、言い難いまほろばを行くのだ。 短い話1 リンゴの村より ガーデンとフィローは、歳の離れた二人組だ。二十代の男がガーデン。書いても呼んでも、…