仄暗い魔法瓶

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帽子のフルト 北西大陸の魔女達

一話 人食い花 後編

一話 人食い花 中編 夜の風は重い。フルトはラネルの元へ急いだ。何も見えず、何度も転んだ。 研究屋敷の扉は開かれ、ランプの光が石畳を滑っていた。玄関先から小さな話し声が聞こえた。 生垣に隠れ、汗を拭いながら目を凝らす。腰の曲がった小さな人影が、…

一話 人食い花 中編

一話 人食い花 前編 帰りは夜になった。フルトとフォリアの二人組は、一つの手土産をラネルに渡した。一つしかないが、大切な手がかりだ。 ビスコが持っていた人食い花の絵は、幾重にも重ねて塗られた油絵で描かれていた。真っ黒に塗られた暗闇の中で、赤い…

一話 人食い花 前編

遅く起きる朝、魔法の練習を昼まで。それが親友のフルトの日課である。 真っ白な毛皮の寝間着姿で、フルトは大きな屋敷の自室の真ん中にポツンと突っ立っていた。両手には、猫耳のついたニット帽子がのっている。 魔術に必要な道具は、このニット帽子だけで…

帽子のフルト 北西大陸の魔女達 プロローグ

北西大陸の魔女の暮らしを書くにあたり、注意しなければならないことがある。彼女達のことを魔女と呼ぶことについてだ。 まだ小国の点在していた古い時代、人間は、底知れぬ魔力を秘めている魔女を恐れていた。やがて彼女達が神の遣いではなく人であることを…